猫よけと不法行為の関係

よくご相談を受けるのは、隣の家の飼い猫による糞尿被害です。

人間関係をこじらせたくないので、目立たなく猫よけをしたいという声が多いです。

確かにお気持ちはわかるのですが、このような考えは日本人独特の「事なかれ主義」とも言えます。平和を優先して、泣き寝入りしてしまう状態です。

あまりに、隣人の対応がひどく、生活に支障をきたしている場合は、行政機関ではなく、弁護士をはじめ法律の専門家へのご相談をおすすめします。

不法行為とは

タイトルの「不法行為」とは、単なる「法律違反」という意味ではありません。

不法行為とは、「故意または過失によって他人の権利を侵害し損害を発生させる行為。」の事を言い、加害者はその損害の賠償責任を負う。と民法で定められています。

簡単に言ってしまえば、次のような事例。

・お隣の猫の糞尿によって植木や芝生が枯れてしまった。
・飼っている鳥や金魚がを食べられた。
・子供が猫の糞を触って感染症になった。

これらの損害を受けたなら、先方に対して「損害賠償」を請求することができます。

損害賠償請求

口頭や文書で「損害賠償を請求します。」と申し立ててもかまいませんし、弁護士や、司法書士の先生の協力のもと、申し立てるのもひとつの方法です。

戸建の場合、引越しするわけにもいかず、法律に訴えるなんてとんでもない話ですが、状況が深刻な場合は、確実性の低い猫よけを講じるよりも、まずは法律の専門家にご相談すべきだと思います。

猫による被害を放置し、毎日他人の尻ぬぐいをして、泣き寝入りするのはあまりに悲しいことだと思いますし、他人の痛みをわからない人はもっと不幸だと思います。

野良猫は法律で保護されていますが、人の生活環境も法律、憲法によって保護されています。

行動を起こすには勇気が必要ですが、行動を起こさなければ何も変わらないと思います。

事件や損害賠償事例

「野良猫を捕獲して虐待し逮捕された。」といったニュースは、たまにみかけますが、餌やりや糞尿被害での事件や事例はあまり報道されることがありません。

数少ないですが、事例を引用しておきます。

猫の飼育禁止求め入居者を訴え 神戸・都市再生機構

ペットの飼育が禁止されている神戸市垂水区の賃貸マンションで、入居者の50代の男性が捨て猫を飼い続け、ほかの住民が迷惑しているとして、管理する独立行政法人・都市再生機構(旧都市整備公団)が1日、猫の飼育禁止を求める訴訟を神戸地裁に起こした。

貸借契約を締結。しかし、この男性は2004年夏ごろから、捨て猫1匹を飼っていることが分かり、階段で猫のふん尿が散乱するなどの苦情が近隣の入居者から相次いだ。同機構は男性に何度も飼育を止めるよう求めたが、男性は「情が移った」「飼育でなく“保護”だ」などと言って応じなかったという。

同支社は今年度すでに、ペットの飼育禁止を求め11件の訴訟を提起。「本来なら裁判までしたくないが、ルールを守っている入居者に迷惑がかかる以上、このまま放置できない」としている。

神戸新聞 2006年2月2日

 猫の餌やり行為、裁判の嘆願書の署名活動が不法行為とされた判例

裁判所判例
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/974/006974_hanrei.pdf

神戸地裁:猫被害判決で150万円の損害賠償命令

神戸市兵庫区で居酒屋を経営する2人が、隣に住む家主が世話する野良猫(約10匹)に自宅の周りに放尿、排便をされたり、猫を巡るトラブルで精神的被害を受けたとして500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、さる6月11日、神戸地裁でありました。

前坂 光雄 裁判官は、「猫を好む人も多いが、他人に不快感を与えない配慮が必要。原告が嫌がる野良猫に餌をやり続けたことは違法」として猫の被害について40万円の慰謝料支払いを命じました。また「原告への悪感情から嫌がらせを続けた」として、糞尿被害以外の損害賠償として、約110万円の支払いも命じました。

http://122.1.226.36/paper/030804/work_cat.html

参考リンク

弁護士電話無料相談(法テラス)

日本弁護士連合会

日本司法書士連合会